仮 設 住 宅 訪問記
                            久慈教会  伊東成晃神父(福岡教区派遣司祭)

久慈から車で15分ぐらいのところに野田村がある。久慈市はあまり津波の被害がなかったが、
この野田村は大変な被害が出ている。久慈教会信徒のOさんも津波によって家を失われた方の一人だ。
現在は中学校のグラウンドに建てられた仮設住宅に、ご兄弟のご家族と共に生活されている。
私が初めて訪問させていただいたのは、8月でした。私が驚いたのは、その簡素さでした。
テレビのニュースなどで見聞きはしていましたが、実際に見て、入ってみて驚きました。
いくら急を要したとは言え、もう少し気の利いた建て方があったのではと思わずにはいられません。
天井は低く、部屋は殺風景な板壁、板張り、庭があるわけでもなく、4戸程がつながった長屋状態だ。
とてもストレスがたまるだろうと思ってしまった。被災されて何もかも失われた方々を
こんなところに住まわせるなんてと、怒りと悲しみを感じた。
しかも2年後には、また出ていかねばならないことになっている。
人間にとって、居場所、住み家が定まらないというのは、とても不安でたまらないはずだ。
こんな私の思いをよそに、当のOさんご一家は、明るく元気に過ごされている。
じっと、うなだれていても仕方ないので、毎日、お友達のところへ出かけては、麻雀や
運動などをして楽しまれている。お友達との絆がとてもうれしく楽しいそうだ。
毎日何かすることがあるというのは、とても大事なことなのかもしれない。
冬が近づく昨今、これからのボランティアは、このような被災者の方々に、毎日
何かイベントを提供するといったことが必要かもしれない。
子どもたちは毎日学校があり、やることがあるが、仕事を失った方、お年寄りには
毎日行くところがあるわけじゃない。一日中家の中に閉じこもっていたら、精神的にもよくないだろう。
だからボランティア活動のひとつとして、毎日何か連れ出すイベントを提供できたらすばらしいと思う。
みんなで映画、みんなでパチンコ等々何でもいい。旅芸人のような小屋が立つというのもいいかもしれない。
誰一人として孤立させない、孤独にさせないというのが、とても重要な気がする。

(カトリック仙台司教区東日本大震災救援・復興活動ニュースレターより)