~地上に平和を~
2013’日韓司教交流会



11月12日から14日まで、金沢市内のホテルや金沢教会などを会場に
第19回目となる日韓司教交流会が開催され、日本側は全司教17名、韓国からは18名の司教と
ベネディクト会大修道院長1名と両国司教協議会の事務局担当者等などが集い
発布50周年を迎えた、ヨハネ23世の回勅『パーチェム・イン・テリス』について改めて学んだ。
また、開催前の11日には、オプショナル・ツアーとして、希望者が岐阜県・白川郷なども回り、
日韓両国の歴史認識の問題が顕著化する外交状況にある中、互いに交流を深めた。

   

はじめに岡田武夫大司教と姜禹一(カン・ウイル)司教(両国司教協議会会長)が挨拶し、
全参加者の自己紹介の後、日本側の講演としてホアン・マシア神父(イエズス会)が講師として
テーマ、「教皇ヨハネ23世『地上の平和』の背景、現代世界に対するその意味と影響」と題して行った。
マシア神父は、本回勅が書かれた時代背景について詳しく説明し、1963年に書かれた回勅だが、
その前年の61,62年が「冷戦危機の頂点」だったと述べた、61年には「ベルリンの壁」が築かれ、
62年は「キューバ危機」が起こり、核戦争の一歩手前まで進んでいた。
教皇ヨハネ23世は、当時の米ソの指導者へ特使を送るなどして、危機回避のために
両者が対話するよう尽力した。こうした背景の中で、平和を訴える回勅が翌年出されたのである。
この回勅の意義をマシア神父は、「福音から社会を見る、社会にあって福音を学び直す、
この往復運動が大事なことだと回勅は訴えている」と述べ1日目の講演を終えた。
2日目に韓国側講演としてスーウォン教区のイ・ソンヒョ補佐司教が講演を担当し、
「パーチェム・イン・テリス、現在においても現実性のある勧告」と題して、話した。
イ司教は、本回勅が善意のすべての人々に向けられている点、その中で、人権の意義や
戦争がない状態だけが平和ではないことなどを訴えていることを思い起こさせた。
さらに現在でも、さまざまな社会的問題や国際紛争など「無秩序」がある中で、「神の秩序」を
取り戻さなければならない。平和の建設のための4つの基本原理、真理、正義、愛、自由を
基軸として、現代社会において「私たち司教は、ゆるしと和解をもたらさなければならない」と呼び掛けた。


講演の後、あいにくの雨の中、兼六園を散策し昼食。午後、金沢教会で、高山右近の残した
一つの書状について、石川県立美術館の村瀬博春さん(東京・麹町教会所属)から説明を受けた。
その場で、金沢教会の人々らによって、両国司教に抹茶が振る舞われた。
さらに、1932年に上海で爆弾事件を起こし、金沢で処刑された韓国独立運動家、
ユン・ボンギル(尹奉吉)の埋葬跡地と記念碑を訪問、献花して祈りをささげた。
日韓両国の歴史問題が懸念される中、司教団での共通理解を求めて始められた交流会で、
占領時代に思いをはせる人物のために共に祈ったことは意義深いことだったと、司教らは感想を述べた。
晩のミサには、教皇大使ジョセフ・チェノットゥ大司教も参列した。説教で、当該教区の司教である
野村純一司教は、パーチェム・イン・テリスについて共に学んだことと、高山右近のことにも触れ、
「世の中の考え方と、信仰を生きることには今も隔たりがあるが、
こうしたことから学ぶべきものがあった」と語った。

 

翌日、朝ミサの説教で、姜禹一(カン・ウイル)司教は自身のチェジュ教区の
海軍基地建設反対運動に触れ、この問題で3人が収監され、2人が起訴されている。韓国で初めて、
このミサを捧げる日に修道女が裁判にかかる。連帯する司祭修道者等が多く裁判所に行くことでしょう。
「パーチェム・イン・テリスの4つの柱のうち、正義は一つ。彼らは正義を守るために働いている人、
イエスの足跡をたどっている人だと思う。司教さまたちも一緒に祈ってほしい」と語った。
最後の全体会で、5つのグループに分かれ、今回の交流会で学んだことを確認し合い、
来年20回目となる交流会のテーマの希望を出した。来年、再来年と行われるシノドス
(代表司教会議)に合わせて、「家庭」を取り上げては、といった案などさまざまなものが出た。
来年の司教交流会は、韓国で開かれる。


司教交流会の終わりに、フィリピンの台風30号被災者のために、
日韓両国司教によるお見舞いのメッセージが作成され参加司教が全員署名した。
後日、英訳してフィリピン司教協議会へ送付されることになった。


~以下、メッセージ内容~
私たち約40名の日韓の司教たちは、日本の金沢市で第19回、日韓司教交流会を開催しました。
そこで、貴国を襲った巨大台風におもいを寄せずにはいられませんでした。
心からお見舞いをもうしあげます。台風HAIYANによって、多くの方が亡くなり、また家、家族、
生きるすべをすべて失い、茫然としている人々の光景をニュースで見、心を痛めております。
フィリピン司教協議会の皆様と心を合わせ、日韓司教一同、一日も早い救援と復興のため
お祈り申し上げます。私たちもできる限りの支援と連帯をさせていただきたいと思います。
神様が、絶望のうちにも希望の光を見出すことができるよう、みちびいてくださることを信じて・・・。