全盲の春木雄一朗さん〜苦悩から生まれる希望〜

             

「神秘に満ちた苦しみの価値」

             

 その祈りの一節に安らぎを見出したのは、山鹿教会の求道者である春木雄一朗さん(44)。病気で全盲となり暗闇に閉ざされてしまった春木さんは、お寺や神社、占いなどに何らかの救いを求めていたが、「希望の光」を灯してくれたのは、偶然に出会ったカトリック教会だけだという。この春洗礼を控えている春木さんの長い道のりは、まさしく「闇から光へ」の体験と言っても過言ではないし、イエスへの信仰の力を証明する話でもある。

               

 今回の「闇」編で、春木さんの病気とその余波をたどる。

             

春木雄一朗氏  山鹿教会の前で

                  

『闇』編

                   

 熊本市出身で山鹿市に住んでいる春木さんは、40歳になるまでごく普通の生活を送っていた。温泉施設の役員で、妻や息子と三人で暮らしていた。そして2020年4月25日未明に突然倒れた。昏睡状態が一週間以上続いたが、やっと病床で意識が戻ったところ、目を開けても周りが全て真っ暗だった。

           

 春木さんがその時にたどり着くまでについて話してもらった。

           

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Q.少年・青年のころについて

                

空手を習っていた頃の
凛々しい春木少年

A.小学生の頃、空手を習い警察官になりたいという夢を持ったりもしました。結局、小学校6年生の時に空手をやめたと同時に、それは夢で終わりました。

 中学校や高校卒業後、大学には進まず、地元のイタリアンレストランに就職しました。その後20歳の頃、本格的なシェフを目指して上京して、ここでは10年間頑張ったのですが、父が病に倒れたため、一度熊本に戻り、父が地元で営んでいた飲食店を手伝うことになりました。

              

                  

   

                    

お子さんを抱く春木氏

 

    

                             

 それから妻に出会い、35歳で結婚しました。そして、祖父が営んでいた温泉施設の手伝いもすることになりました。                                                 

 妻との間には男の子に恵まれ、妻と3人で幸せな家庭生活を築いていきました。

                 

             

                

 しあわせいっぱいの家族写真 

                  

             

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Q.病気で突然倒れたと聞きましたが、その体験についてお話しください。

             

A.今からほぼ4年前、2020年の4月でしたが、倒れる前の2年間近くの記憶をほとんど失ってしまいました。何をやっていたのか思い出せなくなっていました。ですが、後で人から聞いたところによると、突然倒れたそうです。その時点から一週間以上、意識がなかったために当然ながらその間の記憶はありません。やっと目が覚めると、ベッドの上に寝たまま手足が拘束されていることに気づき、何が起きているか全く分からなくてパニック状態に陥ってしまいました。しかも、目を開けても何も見えず、とにかく叫び出した覚えがあリます。

             

Q.その時のお気持ちは。

             

A.最初は検査ばかりされて、原因などを特定するまでに時間がかかリました。結局は、脳炎という診断で、失明はその後遺症だと言われました。しかも、視力を回復する可能性はほぼゼロだと。ただでさえ検査がつらかった上に、今度は点滴を抜かれて再び通常の食事をとってもいいと言われても、手に力が入らず自分の力で食べることもできませんでした。悔しくて運ばれてくる食事を何度も壁に投げつけました。目が見えない挙げ句、力も入らず体は言うことを聞かない…。しかも、コロナ感染パンデミックが始まったばかりの頃で、家族ともほとんど面会できませんでした。気分がだんだん沈んでいくだかりでずっと泣きました。死にたいと思うこともありました。しかし、目が見えないため死ぬことさえできないのです。一言で言えば、とても惨めな気持ちです。本当に闇の中に突き落とされた気分でした。

             

Q.言葉がありません…。どうやって向き合いましたか?

             

A. 医者に頼っても治す薬はなく、四六時中神様に祈る、いわゆる「神頼み」に走りました。お寺や神社、占い等など、「○○が目に良い」と聞けば、遠くても足を延ばしました。その時の僕にはそれしかなかったのです。今にして思えば、それも、主のご計画だったのかもしれません。

                           

( 続編に続く )

                

「障がい者」について語る春木氏

     

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