今年の「カトリック映画賞」受賞作、 松本准平監督の『桜色の風が咲く』のご紹介いたします。
この映画は、世界で初めて盲ろう者の大学教授となった東京大学先端科学技術研究センター教授福島 智さんと母令子さんの実話を基に描いた人間ドラマです。
幼少時、だんだん視力が失われていく智、目が見えるうちに海を見せてあげたいと家族で 行く海。視力のあるうちに家族の顔を胸に刻もうと智が父、母、ふたりの兄をひとりずつ見 上げていくシーンに涙がこぼれます。
家族の愛情に包まれて天真爛漫に育つ智。東京の盲学 校で自立した高校生活を送りますが、18 歳のときに聴力も失ってしまいます。視力、聴力 を失うこと、暗闇と無音の世界に落ちる恐怖、孤独にさいなまれる智。
そんな苦悩、葛藤の 中、希望を与えたのは 母が考案した新しいコミュニケーション手段「指点字」でした。初 めて指点字を母の指が智の手に打つシーンにまた涙がこぼれます。 この指点字をきっかけに智の困難を乗り越えようと生きる力、気迫に満ちた迫真の姿に心 から感銘を受けます。
智の友人の「思索は君のためにある」という言葉通り、この境遇になった自分しかできないことを「する」という、通常では考えられない試練を逆転の発想で難関を突破する姿に心揺さぶられます。
1 月に行われた カトリック映画賞選考上映会、話し合いでは満場一致で選ばれました。是非多くの方と感動を共有したい素晴らしい作品です。
★映画公式サイト https://gaga.ne.jp/sakurairo/
SIGNIS について
SIGNIS(シグニス)とは、”印(しるし)”を意味するラテン語です。
SIGNISは、バチカンの教皇庁広報評議会の下に活動する世界的団体で、80年を越える歴史があります。
本部はベルギーのブリュッセルにあり、ローマに技術サービスセンターを持つほか、全世界140ヶ国に支部があります。教皇ヨハネ・パウロ2世の強い思いで、 2001年に、OCIC(映画・視聴覚)とUNDA(ラジオ・テレビ)の2つの組織が統合され、新しく”SIGNIS”が誕生しました。
各国・地域により活動形態は様々ですが、映画、TV・ラジオ、インターネットなど様々なメディアを通して福音を宣べ伝えています。
日本カトリック映画賞
日本カトリック映画賞は、1976年以来、毎年1回、前々年の12月から前年の11月までに公開された日本映画のなかで、カトリックの精神に合致する普遍的なテーマを描いた優秀な映画作品の監督に贈られます。