今年の「第49回 日本カトリック映画賞」受賞作、 安田淳一(やすだじゅんいち)監督の『侍タイムスリッパ―』をご紹介いたします。

放送、映画、視聴覚メディアに携わるカトリックの国際的な団体である SIGNIS (世界カトリックメディア協議会=本部・ブリュッセル)の日本組織 SIGNIS JAPAN(カトリックメディア協議会、会長・土屋至) は、2024年度の「日本カトリック映画賞」に、劇映画『侍タイムスリッパー』 [安田 淳一(やすだ じゅんいち) 監督 131分 配給:ギャガ]を決定、7月12日(土)日本教育会館一ツ橋ホールにて授賞式、映画上映および対談(安田 淳一監督×シグニスジャパン顧問司祭、晴佐久昌英神父)を行います。
「日本カトリック映画賞」は、前の年の12月から次の年の11月までに日本国内で制作・公開された映画の中からカトリックの世界観と価値観にもっとも適う作品を選んで贈られるもので、今年で49回目を迎えます。
今回の授賞作『侍タイムスリッパー』は幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップして 「斬られ役」として生きなおすという奇想天外な物語です。この映画の稀にみる面白さ、普遍的なメッセージ性が高く評価されました。私利私欲なく、人を大切に生きる侍の姿に心から感動の拍手を送りたくなるのではないでしょうか。
「真剣勝負」の映画 (授賞理由)
かっこいい映画だ。その一言につきる。映画における最高の誉め言葉のひとつである「かっこよさ」に溢れた、人を幸せにする映画だ。
真剣であることが、こんなにもかっこいいなんて。そして、真剣に生きる人間をこんなにもかっこよく撮れるなんて。主人公の立ち居振る舞いや嘘のない剣さばき、そのまっすぐな生き方がかっこいいのはもちろんだが、それにも増して、こんな映画を作りたいと真剣に夢見て、資金不足をものともせずに天命のように撮り続け、ついにはこれほどに笑って泣いて心を震わせられる、真剣勝負の映画を作り上げてしまう監督こそが、めちゃめちゃかっこいい。
ああ、そうだった、映画って人を喜ばせるためにあるんだった。人を喜ばせることに真剣になり、そのために犠牲を払うことって、人が共に生きる原点なんだ。純粋にそう感じさせてくれたことに、感謝したい。主人公が私利私欲を捨て、命がけで義を守ろうとする姿は武士道そのものであり、友のために命を捨てるキリストの道さえ思わせて、心が洗われる。
感動は、生きる原動力だ。今の日本のかっこわるい政治家や、かっこわるい経営者を見るまでもなく、いつの間にかかっこわるい大人になってしまったぼくらに元気を取り戻してくれる、この真剣に面白い映画をなんとしても表彰したいと思った。なにしろ、あのラストシーンで息が止まったまま映画を観終え、 ようやく深呼吸したとき、こんな自分ももうちょっとかっこよく生きれるかもと、思わず背筋を伸ばしてしまったのだから。
まったくの蛇足だが、この作品のかっこよさにキリスト教的価値観を見出した、、われらが日本カトリック映画賞も相当かっこいいと思う。
SIGNIS JAPAN顧問司祭 晴佐久昌英(東京教区司祭)
SIGNIS について
SIGNIS(シグニス)とは、”印(しるし)”を意味するラテン語です。
SIGNISは、バチカンの教皇庁広報評議会の下に活動する世界的団体で、80年を越える歴史があります。
本部はベルギーのブリュッセルにあり、ローマに技術サービスセンターを持つほか、全世界140ヶ国に支部があります。教皇ヨハネ・パウロ2世の強い思いで、 2001年に、OCIC(映画・視聴覚)とUNDA(ラジオ・テレビ)の2つの組織が統合され、新しく”SIGNIS”が誕生しました。
各国・地域により活動形態は様々ですが、映画、TV・ラジオ、インターネットなど様々なメディアを通して福音を宣べ伝えています。
日本カトリック映画賞
日本カトリック映画賞は、1976年以来、毎年1回、前々年の12月から前年の11月までに公開された日本映画のなかで、カトリックの精神に合致する普遍的なテーマを描いた優秀な映画作品の監督に贈られます。